
中3の夏休みは「全教科をまんべんなく総復習」しようとすると、たいてい失敗します。
結論から書くと、夏にやるべきことは数学と英語の、中1・中2の穴埋めです。ここに時間の7割を使ってください。理科・社会・国語は後から間に合いますが、数学と英語の穴は放っておくと秋以降ずっと足を引っ張ります。
私は大阪で個別指導の塾講師をしています。毎年この時期に中3の夏の計画を一緒に立てるので、うまくいく子とそうでない子のパターンはだいたい見えています。この記事では、その経験をもとに「何を・どの順番で・1日どれくらい」やればいいかを具体的に書きます。
先にお断りしておくと、この記事の対象は「定期テストで平均点前後、中1・2の内容に不安が残る子」です。北野・天王寺など文理学科の上位校を狙っていて、すでに1・2年に大きな穴がない子には、この記事の時間設定では少なすぎます。その層なら1日7〜8時間は最低ライン(トップ層には10時間近くやる子もいます)で、中身も穴埋めではなく入試レベルの演習が中心になります。
「全教科の総復習」が失敗しやすい理由
夏休み前の本屋には、5教科がまとまった分厚い総復習教材が並びます。あれを買って、7月末に張り切って始めて、8月10日ごろに止まる。これが一番よくあるパターンです。
理由は単純で、量が多すぎて1周目が終わらないからです。5教科×中1・2の全範囲を40日程度でやり切るのは、計画としてそもそも無理があります。そして中途半端に終わった総復習は、「どこまでやったか」も「どこが弱いか」も残らないので、秋につながりません。
夏の計画で大事なのは、やることを増やすことではなく、やらないことを決めることです。
なぜ数学と英語に絞るのか
数学と英語は「積み上げ型」の教科です。中1の内容の上に中2が、その上に中3が乗っています。
- 数学:中1の正負の数・文字式でつまずいたままだと、中3の二次方程式も関数も解けません。
- 英語:中2の不定詞・比較があいまいなままだと、中3の長文はほぼ読めません。
つまりこの2教科は、穴があると新しい単元の授業まで分からなくなる教科です。逆に、理科・社会は単元ごとの独立性が高く、「地理はできるが化学は苦手」という状態でも他の単元の学習は進められます。だから暗記中心の理科・社会は秋以降でも追い込みが利きますが、数学・英語の穴埋めは夏が実質最後のチャンスです。
まとまった時間がないと、さかのぼりの復習はできません。学校の授業が止まる夏休みは、そのための期間だと考えてください。
1日のスケジュール目安
部活を引退しているかどうかで変わるので、2パターン示します。あくまで目安です。
引退後(勉強に専念できる場合)
| 時間帯 | 内容 |
|---|---|
| 午前(2時間) | 数学:中1・2の復習教材 |
| 午後(2時間) | 英語:文法の復習+単語 |
| 夜(1時間) | 理科・社会の暗記、学校の宿題 |
合計5時間。「受験生は1日8時間」のような話も聞きますが、8時間を計画に入れて3日で崩れるより、5時間を40日続けるほうが力になります。
引退前(大会が夏休み中にある場合)
| 時間帯 | 内容 |
|---|---|
| 朝、練習前(1時間) | 数学:大問を2〜3問だけ |
| 夜(1時間) | 英語:文法1単元+単語10個 |
部活が続いている子は、量を追わずに「毎日ゼロの日を作らない」ことだけ守ってください。引退後に一気に増やせるかどうかは、この期間に机に向かう習慣が残っているかで決まります。部活と勉強の両立のコツは別の記事に詳しく書いたので、そちらも参考にしてください。
部活で忙しい中学生が勉強と両立するコツ|塾に行く時間がない子へ
教材は「薄い1冊」を最後までやる
使う教材は、数学・英語それぞれ中1・2の範囲がまとまった薄めの復習教材を1冊ずつで十分です。選ぶ基準は次の2つだけです。
- 夏休み中に確実に1周終わる薄さであること
- 解説を読んで自分で理解できること(解説が薄すぎるものは避ける)
1冊を最後までやり切ると、「どこが解けて、どこが解けないか」の一覧が手元に残ります。これが秋以降の勉強の地図になります。分厚い教材の3割より、薄い教材の100%のほうが価値があります。
間違えた問題には印を付けて、8月の後半に印の付いた問題だけもう一周してください。1周目より短い時間で終わり、弱点がはっきり残ります。
理科・社会・国語はどうするか
やらなくていい、という意味ではありません。優先順位を下げて、次の程度に抑えるという意味です。
- 理科・社会:夜の30分〜1時間で、中1・2の暗記単元(地理・歴史・生物・地学あたり)を一問一答形式で回す。書いて覚えるより、口頭やアプリでテンポよく回数を重ねるほうが向いています。
- 国語:漢字と語句を毎日10分。読解は焦って問題集を積むより、模試や実力テストの過去問を解いたときに「なぜその答えになるか」を解説で確認するほうが効きます。
9月からの動きを先に知っておく
大阪の中3は、2学期に入ると実力テストの結果が進路指導の材料になっていきます。また、9月以降は五ツ木の模擬テストを受ける子が増え、志望校までの距離が数字で見えるようになります。
つまり、秋は「自分の位置を測って志望校を絞る」時期です。夏のうちに数学・英語の土台を作っておくと、この時期の模試の結果が実態を反映したものになり、進路の判断がしやすくなります。
志望校選びの材料としては、倍率のデータもまとめています。秋以降に志望校を考えるとき、あわせて確認してみてください。
まとめ
- 中3の夏は、全教科の総復習ではなく数学・英語の中1・2の穴埋めに時間の7割を使う
- 教材は薄い1冊を選び、最後までやり切って「弱点の一覧」を手元に残す
- 引退前は量より「ゼロの日を作らない」こと。引退後は1日5時間を安定して続ける
- 理科・社会は夜の暗記タイム、国語は漢字10分で維持する
夏の40日は長いようで、計画が崩れるのは一瞬です。「やることを絞って、最後までやり切る」。これだけで、9月のスタートラインは大きく変わります。